「ぢらい」と<チャーリー>のこと

ぢらいロゴ洞穴3洞穴1傷痍兵男二人

傘二人

イラストも全て森田有・作です。

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「森田 有」(もりた たもつ)さんが残したもの。

揺るがなかった、ぶれなかった人が拘ったもの。

戯曲「ぢらい」を書かれたのは、1994年。

その前年の忘年会で戯曲を渡され、正月に読んだ時の興奮は忘れない。

すぐに電話をした。登場人物でミラーボール担ぎの男が出て来るのが、どんな発想かと思ったのだ。

何処の世界にそんな職業があるかと。ご本人はそんな時もふっふっと、口を押さえて笑っている人だった。「

ぢらい」は「地雷」で、あえて「ぢらい」と歴史かな使いにしたのは、「地雷」ではわかりやすぎ、

「じらい」では分からず、という思いからで、PKO、アジア諸国への差別、自然破壊。

そんな状況で書かれた戯曲だった。

第一回公演のパンフレットに書かれた文章より。

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「足」               森田 有

少年は10年間、京都大学の西部講堂でトランペットを吹き続けてきた。

演奏する姿がチャーリーパーカーに似ているところから、音楽仲間は彼のことをチャーリーと

呼んでいる。

知的障害を持つ18才の彼は、今年3月養護学校を卒業した。4月1日からは、山科の小さなうどん屋で、

働いている。うどんの生地を足で踏んで、コシとネバリを出す。不況の中でやっと見つかった仕事だった。

そんなTV番組にスタッフとして参加した。

その男はアジアの小さな国に出かけた。そして地雷を踏んでしまった。今はただ、地雷を踏んだ右足を

動かさずにジットしているのが仕事である。

TVカメラが捉えたうどんの生地を踏むチャーリーの足のアップ。左足の足がリズミカルに動いている。

足を動かさないで、ただひたすらに耐えている稽古場の男。動かしたくても動かせない足!。

休みたくても動かし続けねばならない足!。二つの足が重なっては消える。

そして、私は、地団駄を踏んで稽古場にいる。

4月22日。チャーリーは今日もうどん屋で生地を踏み続けているだろうかー。

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森田さんは、この原稿を書いた後、しばらくして、入院することになり、二度と稽古場には来れなかった。

4月22日、なんとか、演出不在のまま、幕はあいた。

亡くなられて、今年で17年になる、今だと、この「ぢらい」はどんなカタチになるのだろう。

もう、ふっふっとは笑えないかも。

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