一般的には、お袋の味を覚えているものだが、私の場合はやはり、おばあちゃんの味だ。
お金も無い頃だから、殆んどは魚の粗と野菜のたいたん(炊く、煮るを言う)が多く、子供には、
骨とかが苦手なので、嫌だった。が、残すと叱られるから、無理をして飲み込むようにして食べていた。
おじいちゃんが大好きなのは、なまぶし(カツオの干した物、なまりぶし)と大根のたいたんだった。
これも、子供には 口の中でぼさぼさして、食べにくく苦手だった。毎朝、魚屋さんが御用聞きに来る。
自転車の荷台に、いっぱい魚を入れたブリキの入れ物を、積み上げて「今日は何しまひょ?」
(しょ ではなく ひょというのが、多かった)「なんぞの粗と、焼き魚にしとくわ」と。また 魚づくしの日か。
後は高野豆腐の炊いたんや、野菜の炊いたんで、一年のほとんどが、煮物だった。
その味を覚えているのか、どうなのか、今、私が作る煮物はたいていの場合、味は一発で決まる。
それが教えられた事なのだろう。昔は台所は暗く、また ガスはあったが、コンロは一つで、ご飯はへっついさん
(おくどさん かまど)で炊いていた。へっついさんは、形はそのままで、薪ではなく、その中にガスを引いていた。
おかまで炊くのは変わらなかったので、炊けるまで、台所に居なければならなかった。
下駄(背の高い りきゅう下駄)を履いて、働いていた77歳を過ぎていたおばあちゃんだ。
おばあちゃんの味は、煮物!。きっちり継いでいますよ。おばあちゃん!