幼き頃・・・25・・・おじいちゃんと銭湯

おじいちゃんは、本当に目が見えないのかと、疑いたくなる程、日常のいろんな事を、難なくこなしていた。

その一つに、庭作りだ。季節ごとに綺麗な花を、みごとに咲かせていた。

覚えているのは、背の高い真っ赤なカンナ、(そう言えば、この頃、カンナを見かけなくなったのは

不思議だ。)、あおい(今はゼラニュウムのいうのかな?)、菊、けしの花(とても、大きな花で

色がきれいだった。ひょっとして、今は違法になっているのではないだろうか?ま、ま、まさか?

おじいちゃんが・・ラリってたりして?)、あさがお、ひまわり、ダリヤ、ぽんぽんダリヤ、桔梗、(桔梗は

つぼみのときのふくらみをつまむのが、好きだった。)ホウセンカ(これも種が出来るとはねるのが

面白かったので、つまんで遊んだ)、コスモス、矢車草、スイトッピーと、所狭しだが、上手く配置など

考えられていた。その事も見えないのに不思議だった。今はいろんな花の種類が多くみられるが、

この頃の定番のような花々だったように思う。小さな庭だけど、かかんで草取りや土をきれいにしていたり、

まめに動いているおじいちゃんを、眺めているのは飽きなかった。廊下に足を投げ出して、時にはそのまま

昼寝したりしていた。私が見ているを、知っていたのに、何か話すわけでもなく、ただ黙々と仕事をしていた。

私の花造りが好きなのは、おじいちゃんのを、見ていたからかも知れない。花の名前も自然に覚えていた。

もう一つは、毎朝、魚屋が御用聞きに来るのだが、飽きもせず、何かしらの魚の粗を頼んでいた。

父の帰る日は、煮魚の鯖や造りを頼んでいたが、自分達は殆んど粗だった。

その粗を、上手に口の中に入れ、細かな骨をだし、時にはチュウチュウと音を立てて食べていた。

粗しか頼まなかったのは、もちろんお金も無かったのもあるが、たぶん好物でもあったのだろう。

二人で向かいあって、ほぼ毎日チュウチュウと食べていた。

その夕食までに、私の日課として、おじいちゃんを銭湯に手を引いて連れて行くことだった。

銭湯は近くに2件あったのだが、おじいちゃんはかってが分かっている古い方の銭湯が好きだったようだ。

私は、おじいちゃんの手を引いてつれて行く時、「毎日偉いなおじいちゃんを、連れて迎えに行って」と皆が話して

いるのを、何処と無く意識している嫌な子だった。(皆が遊んでいても、こうしておじいちゃんをお風呂に

連れて行く小学生です。)と言う顔をしていたに違いない。ある日、おじいちゃんが言う時間に、迎えに行くと

おじいちゃんは隣の酒屋から出て来た。?なんで?風呂やでなく、酒屋?ぐるぐると頭の中を回転させた結果、

(はは~ん!分かったわ。おばあちゃんに内緒で、お酒を飲んで、風呂上りだから赤い顔も誤魔化せるから、

一杯飲んでんのや!これは言うたらあかんわ!知らん顔しとかなあかんわ!ばれたら偉い事になるわ!

こっちの銭湯を 選んでいる理由もこれで分かったわ!秘密や!私とおじいちゃんの秘密や!)

おじいちゃんは、知らん顔で風呂屋の入り口で私を待つのに移動していた。

私は、少し時間を置いて、「おじいちゃん!」と声をかけて手を取った。いつもの仕事でごつごつとした手だ。

二人とも、何も言わない、私は大きな秘密を持ったようで、なんとなくうれしかった。

おじいちゃんの下駄の音が心地良かった。その日からは、すこし遅くに迎えに行った。

小学4年生にしたら 出来上がっている女の子だ。

4おじいちゃんの庭 4年生

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