幼き頃から・・・1・・・意地悪なばあさん

昔から何かの折に 幼い頃のことを思い出す。

映像を観るように出てくる物事がある。

その話をミニミニ物語として 綴ることにした。

思い出していく話で つづく・・・になる。

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<写真は、父方の親戚と、母と母の妹>

母に抱かれているのは私だと思うのだけど・・。?

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「早よう寝~や、もう8時半やで。電気代も、もったいないし、明るいとこっちは

寝られへん」、また同じ時間に同じ言葉が、襖ごしに聞こえて来る。

しゃがれ声で何処となく意地の悪い祖母の声だ。

ラジオはつけっぱなしなのに もったいないもないものだ。

今日も浪曲で 広沢虎造のうなり声が聞こえている。

<頃は六月~~中のころ~~~~> もう、聞きあきたわ~~~

「もうちょっと勉強せなあかんねん。明日試験やし」と 姉が答える。

「ふん! 女子(おなご)がそんなに勉強せんかてええのに」と意地悪な声。

私は、いつものように成り行きを見守り、息をひそめ、布団の中でじっと天井を見上げ、

「あ~あ またや」と。<波風を立てないよう、良い子ぶって寝たふりしていよう、

そうすれば火の粉をかぶらずにすむ。>

狭い廊下で小さな机、小さなスタンドをつけて、明日の試験に向かっている姉を

布団の隙間から盗み見ている私。

その後も、時折祖母の声がブツブツ言っているのが聞こえる。祖父と話をしている。

祖父は目が不自由であったがとてもやさしくまた器用な人であった。

若い頃からお酒が好きで、戦後、メチールアルコールとかいうのを飲み、

目が見えなくなったらしい。

戦後はそんな人が珍しくなかったとか。

が、なんとなく世間の目は、良い様には言ってなかった気がする。

本来の手先の器用さで、裏の小さな庭はいつも四季折々にいろんな花を咲かせていた。

あれは誰に見せるための花だったのか? 祖母のためだったのか?

幼心にもこの人は本当は目が見えているのに、見えないふりをしているのではないかと、

時々思ったりした。

いろんな事を観察するのが好きな私は、祖父の行動はいくら見ていても退屈しなかった。

見えていないまなざしはいつも優しかった。祖父と祖母は祖母の方が10歳も年上であった。

私たちの本当の祖父が亡くなった後、布団職人の祖父と駆け落ち同然で

一緒になったと、大きくなってから誰かから聞かされた。

祖母には成人した子供が私の父も含め4人もいたので10歳も年下の

それも結婚経験もない男と一緒になるなんてなんて凄い!ことをしたのか!

そりゃ、駆け落ちのような事でもしないと一緒になれなかっただろう。

明治生まれの人にしては、本当に思い切った生き方をしたもんだと感心する。

このような事は幼い頃は知る由もなく、後で成人してから親戚の誰かに聞いた話だった。

聞いたころには二人とも他界していた。

その勇気ある情熱的なことをやった祖母の血の何十分の一かは、

私に間違いなく流れているのだ。

姉は黙って机に向かっている。少なくとも私より姉は成績が良かった。

お金が無い家から高校に行くと言い張り、古い考えかたの祖母たちからは

「女の子は中学を出たら充分や! 働いて少しは家を助けなあかんのに

贅沢いうてからに!」と事あるごとに言われいる。

まだ小学生の私には、高校にいく現実感がなく、姉と祖母の戦いに

とにかく巻き込まれないよう、良い子ぶっていた。

祖母の機嫌をとるため「私は中学で充分や、中学出たら働くわ」などと言い

祖母を喜ばせるようなコツを身につけていた。

こんなことをやってのけていたが、いつもこの家や叔母の家にいるときは、

大人の動向をじっと見据え息を潜めて何をするのにもタイミングや声の出し方や

笑い方やトイレの仕方まで、一つ一つに気を配っている子供であった。

それは一つのタイミングを外すと10や20の小言を延々と

聞かなければいけなかったからである。

小学校二年の時に母が出て行きそれ以来、娘たちがそんな風に、

血の繋がっている祖母や叔母たちに預けられ 生活しているなど、

余り家に帰らない父は何も知らなかった。

父がたまに帰って来ると、祖母は私たちを叱っていた顔とはうってかわり、

ニコニコと迎えいれ、父のために、特別に注文しておいた刺身や

煮つけをいそいそと用意し、漬物をたるからだして、父の好物である茄子の

色艶の良いのを選び出して膳に並べていく。

この差の大きさには、もう慣れてしまっていてあまり不思議にも思わなかった。

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