『海炭市叙景』の原作者、佐藤泰志の三島由紀夫賞候補となった小説を基に、
北海道函館を舞台に生きる場所のない男女の出会いを描くラブストーリー。
仕事を失った男がバラックに住む女と出会い、家族のために必死な彼女をいちずに愛し続ける姿を描く。
主演は、『シャニダールの花』などの綾野剛。主人公と惹(ひ)かれ合うヒロインを、池脇千鶴が演じる。
メガホンを取るのは、『オカンの嫁入り』などの呉美保。
美しい函館を背景につづられる、男女の愛の軌跡と人生の過程が心に突きささる。
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監督が「オカンの嫁入り」の<呉 美保監督>・余りにも違う路線で驚く。
ずばり<寄り添う>という言葉が、一番この映画にふさわしい。
寄り添うって、生きていく中で一番難しいのでは?と思ってしまう。
23年前41歳の若さで自ら死を選んだ佐藤泰志・「海炭市叙景」「書くことの重さ」も、
観たのだが、彼自身は人と触れ合うのが、そんなに得意ではなかったかと思うが、
「海炭市叙景」でも、人を見る視点が遠くにいながら、寄り添っていた。
この映画は今に置き換えているのだけれど、匂って来るのは70年代だ。
もちろん佐藤泰志氏が青春を生きた時代。
時に胸を絞めつけるようなシーンもあるのだが、暗くはない。弟・拓児の存在が、全篇を通して、
いろんな事を払拭してくれていた。
そして、俳優人が、そろぞれに存在感溢れる作品だった。
最近のドラマや映画で特に日本映画では、その俳優の色が、何時も同じで、魅力がだんだんと、
薄れて行っているように感じている。この映画では、俳優が新しい世界を作り出していた。
特に好きな俳優でもある<綾野 剛>さんは、何かが変ったであろうと思えた。
それだけにこの映画の全てに関わった人たちの凄さがあったのだと思う。
上映されている映画の奥をも、伝わって来る作品だった。そういう意味でも寄り添っていたのかと。
バックに流れるバンドネオンの音色が、染み入ったなあ~~・・・。