料理を創り出したのは小学校5年生の時だった。
家庭科の時間で始めてカレーを作った。
祖父母と暮らしていたので「今日はカレーを作ったで。」
と、得意げに言ったのを覚えている。何日かして
カレーを食べたくなったのか、お祖母ちゃんが、
「これでカレーを作ってくれへんか?」と材料費をくれ
市場に買出しに一人で行って学校で教わったのを
張り切って作った。その頃の台所は土間でガスコンロが
一つあるだけ、今思うと広さはあったのだが綺麗好きの
おばあちゃんはその土間を水で掃いた後、利休下駄を
履いて雑巾掛けをしていた人だった。もちろん着物で、
裾をたくしあげてしっかりと拭くのだった。その祖母も
私が高校生の頃、認知症になりトイレへの失敗があり、
近くの叔母の家にそれより以前におじいさんは梅田の
親戚にとバラバラに引き取られた。その別れは祖母は
立てないのに這って玄関に行っていた。
おばあちゃんは叔母の家だったから時々会いに行くと
叔母の名前を言ってお菓子などくれないと告げ口する。
全く子供に返ると言うが、気の強い人がこんなにも
なるのかと寂しいのと、可愛いのとが入り混じっていた。
八十八歳で亡くなった。カレーを作っていると始めて
作ったあの頃の風景が今も鮮明に出て来る。