芸歴80年を超えるポーランドの大ベテラン、ダヌタ・シャフラルスカを
主演に迎えた心にしみる人生賛歌。
人生の喜びも悲しみも知り尽くした女性が、素晴らしい終幕を迎えるために
奮闘する様子を陰影に富んだモノクロームの映像でつづる。
メガホンを取るのは、『僕がいない場所』のドロタ・ケンジェジャフスカ。
息子を『殺人に関する短いフィルム』のクシシュトフ・グロビシュが演じている。
老いてなお、美しく誇り高き主人公の姿に目がくぎ付けになる
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こんなにも静かな世界に引き込んでくれる映画が、かってあったろうか。
独り言のように、愛犬(フィラ)との、会話で、進んで行く。
フィラも、言葉が分かるかのように表情豊かで、この二人の生活は誰にも邪魔は出来ない。
「終焉を迎える」 誰もがそのときは来る。どう迎えるか、どう向き合えるか、と、
もうどっぷりとその年齢に、浸かっている自分と、映像の中の主人公とを重ね合わせて行く。
ふと現実を突きつけられそうになると、モノクロの中の美しい木漏れ日に救われる。
聡明で、人生を豊に過ごしてきた言葉、孫にも決して優しい良いおばあちゃんではなく、
きっちりと現実にむき合わせるやさしさ、息子達に残す物への選択のすばらしさ。
最後に紅茶を持って行く少年が、とても(美しい少年)だったのは、天国に召される時に、
こんなにも美しい少年が、迎えに来てくれた!と、私の勝手な想像になった。
原題は「死ぬ時」だそうだ。