飲食店の営み19年、さまざまな人間模様をカウンター中からのこもごもを。
カウンターの中から見る世界は、飲んでる立場になると全く気付かないもの。
中からは、毎日劇的に近い事柄が次々とあり、年数経過と共に占い師の様に、
次に起こるべき結末などが手に取るように分かったしまうのだ。
まあ、長年の勘が働く事が多く、若いスタッフにそんな話をして、言い当てると、
余りにもその通りだったりするので驚いて怖がっていたりした。
ご本人達は気付かないのだが、職業や、嘘つきや、女性を口説く目的や、
その反対に良い男はいないかと目がものを言っているご婦人や、怪しい関係や、
そんな事は、簡単に見通せるようになる。しかし、外へは漏らさないのが鉄則。
ある料理屋をされていた女将が言った「私らは<きちがい水>を売ってお飯を
頂いてますねん。そんな水売っといてそこで起きた事をいろいろ言うたら
あきまへん、これが信用されますねんで」と、着物の襟をくっとぬき襟にされ、
粋なお言葉を頂戴いたしました。この女将がお客さんを送って行かれる姿は、
水を打った入り口を、小またで泳ぐように右左と少し揺らしながらの姿だった。
少し芝居がかっていたが・・・やはり粋なお姿であった。
日々事は、起こっていた。その気になれば毎日、笑える脚本が書けていただろう。
差し障りの無いところの名物スタッフ、名物お客の話をぼちぼちとしていこう。
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<白玉ちゃんと言われた別嬪お嬢様の話。>
大学生の彼女は本当に別嬪さんで、明るく屈託の無い人子だった。
誰でも気安く楽しげに話すのでみんなに好かれていた。
ビールを少し飲めたぐらいだったが、夕方になると店に来ていた。
友達をバイトとして紹介してくれたのが縁だったからだ。
ある日、お客さんのAさんが入って来て、「えっ、白玉ちゃんやん?」と彼女を呼んだ。
「え、なんで?白玉ちゃんなの?」と聞くと彼女は困った様だが笑いが止まらずだった。
「実は彼女がバイトをしていた喫茶店によく行ってたんや。そこへ善ざいを作って来て、
お母さんの作っていた白玉を作ろうとして<固まらないの?>ってなんやどろどろしたのを
鍋に入れて持ってきたんや。「どんな粉入れた?これ白玉粉と違うわ!片栗と違うか?」
「でも、おかあさんもこんな白い粉を鍋に入れてから。他にもこんな袋の白いのあるの?」
「わあ~~~やっぱりこれは片栗や!いくらしても固まらないで」と、皆大笑い!
その後、ママが白玉を作り無事に食べたとの事、それ以来、「白玉ちゃん」とあだ名されたと。
彼女はこれだけではない。秋刀魚を貰ったので焼こうかと秋刀魚を見たら血が出ていた、
かわいそうにとオキシドールで拭いてやった、後で焼いたら臭くて食べれなかったとか、
お米を洗剤で洗ったとか、それはそれはかなり驚かされた。
良く聞くと、小さい頃から体が弱かったから、何もさせてもらえなかったからと。
でも、頭が良く、話す事柄には頭の良さが分かるユーモアに溢れていた。
文章力にも優れていたので、また、いつかご紹介しょう。