捨てられない「暮らしの手帖」・・・5

海の向こう10海の向こう9

とにかく
生きていた
生きているということは
呼吸をしている
ということだった
それでも とにかく
生きていた

どこもかしこも
白茶けていた
生きていた
とはおもっても
生きていたのが幸せか
死んだほうが幸せか
よくわからなかった

気がついたら
男の下駄を はいていた
その下駄のひととは
あの焔のなかで
はぐれたままであった
朝から その人を探して
歩きまわった
たくさんの人が
死んでいた
誰が誰やら 男と女の
区別さえ つかなかった
それでも やはり
見てあるいた

生きていてほしい
とおもった
しかし じぶんは
どうして生きていけば
よいのか
わからなかった

どこかで
乾パンをくれるという
ことを聞いた
とりあえず
そのほうへ あるいていって
みようと おもった

いま考えると
この<戦場>で死んだ人
の遺族に
国家が補償したのは
その乾パン一包みだけ
だったような気がする

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