捨てられない「暮らしの手帖」・・・2

海の向こう4海の向こう3

焼夷弾である
焼夷弾が投下されている
おそらく数十秒 数百秒
焼夷弾が
想像をこえた量が
いま ここの上空から
投下されているのだ
それは 空中で 一度炸裂し
一発の焼夷弾は
72発の焼夷弾に分裂し
すさましい光箭となって
地上に たたきこまれる
それは
いかなる前衛美術も
ついに及ばぬ
凄烈不可思議な
光蹟を画いて
数かぎりなく
後から 後から 地上に
突き刺さってゆく

地上

そこは<戦場>では
なかった
この すさまじい焼夷弾
攻撃にさらされている
この瞬間も
おそらく ここが
これが<戦場>だとは
おもっていなかった

爆弾は 恐ろしいが
焼夷弾は こわくないと
教えられていた
焼夷弾はたたけば消える
必ず消せ
と教えられていた
みんな その通りにした
気がついたときは
逃げみちは なかった
まわり全部が 千度を
こえる光熱の焔であった
しかも だれひとり
いま <戦場>で
死んでゆくのだ とは
おもわないで
死んでいった

にほんブログ村 その他日記ブログ つれづれへ *ポチ戴くと励みになります

 




  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA