捨てられない「暮らしの手帖」・・4

海の向こう8

海の向こう7

あの音を
どれだけ 聞いたろう
どれだけ聞いても
馴れることは なかった
聞くたびに
背筋が きいんとなった

6秒吹鳴 3秒休止
6秒吹鳴 3秒休止
それの十回くりかえし
空襲警報発令

あの夜にかぎって
空襲警報が鳴らなかった
敵が第一弾を投下して
七分も経って
空襲警報が鳴ったとき
東京の下町は もう
まわりが ぐるっと
燃上っていた
まず まわりを焼いて
脱出口を全部ふさいで
それから その中を
碁盤目に 一つつづ
焼いていった

1平方メートル当たり
すくなくとも3発以上
という焼夷弾
<みなごろしの爆撃>

三月十日午前零時八分から
二時三七分まで
一四九分間に 死者
8万8千7百93名
負傷者
11万3千62名
この数字は
広島、長崎を上まわる

ここを 単に <焼け跡>
とよんでよいのか
ここで死に ここで傷き
家を焼かれた人たちを
ただ <罹災者>で 片づけてよいのか

ここが みんなの町が
<戦場>だった
こここそ 今度の戦争で
もっとも凄惨苛烈な
<戦場>だった

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