捨てられない「暮らしの手帖」・・・3

海の向こう6海の向こう5





















夜が明けた
ここは どこかわからない
見わたすかぎり 瓦礫が
つづき ところどころ
余燻が 白く煙を上げて くすぶっている
異様な 吐き気のする臭いが
たちこめている
うだるような風が ゆるく吹いていた

しかし ここは
<戦場>ではなかった
この風景は
単なる<焼け跡>にすぎなかった
ここで死んでいる人たちを
だれも<戦死者>とは
呼ばなかった
この気だるい風景のなかを
動いている人たちは
正式には 単に<罹災者>であった
それだけであった

はさしである
負われている子をふくめて
この六人が六人とも
はだしであり
六人が六人とも
こどもである
おそらく 兄妹であろう
父親は 出征中だろうか
母親は 逃げおくれたのだろうか

持てるだけの物を持ち
六人が寄りそって
一言もいわないで
だまって 焼けた鋪道を
歩いてゆく
どこからきて どこへ
ゆくのか
だれも知らないし
だれも知ろうとしない

しかし
ここは<戦場>ではない
ありふれた<焼け跡>の
ありふれた風景の
一つにすぎないのである

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